はじめに
※ 本記事は以下を親記事とした子記事に該当する。
https://www.simulationroom999.com/blog/mechanics-overview/
今回は力学の中で一番挫折者が多いと思われる極座標系こと回転運動となる。
しかし、弧度法でワンクッション置いたので何となくイメージが湧きやすくなってはいないだろうか。
回転運動はモーター関連を調べる際に避けて通れない。
回転の運動方程式がどのように使われるかの一例として以下参照。
上記以外にもモーターに関連する情報はモータータグから
回転運動の各定義
直線運動の時と似たような定義が4つある。
- トルク\(T[N・m]\)
- 角運動量\(L[N・m sec]\)
- 仕事\(W[J]\)
- 仕事率\(P[W]\)
関係性も直線運動と似た感じになる。(速度→角速度の違いはあるが)
- 角運動量\(L[N・m sec]\)=トルク\(T[N・m]\)×時間\([sec]\)
- 仕事\(W[J]\)=角運動量\(L[N・m sec]\)×角速度\([rad/sec]\)
- 仕事率\(P[W]\)=仕事\(W[J]\)÷時間\([sec]\)
ちなみに仕事と仕事率は直線運動と同じものである。
つまり、この仕事、仕事率が直座標系との直接的な接点となる。
トルクと仕事
※Google経由で「トルク 仕事」のキーワードで入ってくる方々が結構いるようなので、追記。
基本的には上記の理屈をそのまま適用すればOK。
仕事\(W[J]\)=角運動量\(L[N・m sec]\)×角速度\([rad/sec]\)
仕事\(W[J]\)= トルク\(T[N・m]\)×時間\([sec]\)×角速度\([rad/sec]\)
角度\([rad]\)=時間\([sec]\)×角速度\([rad/sec]\)
なので、
仕事\(W[J]\)= トルク\(T[N・m]\)×角度\([rad]\)
と表現できる。
さらに後述されてる話ではあるが、
トルク\(T[N・m]\) =力\(F[N]\times\)半径\(r[m]\)
なので、
仕事\(W[J]\)=力\(F[N]\times\)半径\(r[m]\) ×角度\([rad]\)
力\(F[N]\times\)回転半径\(r[m]\) の\(\times\)は掛け算ではなく、クロス積(外積)な点に注意。
クロス積(外積)なので、以下の表現もできる。
仕事\(W[J]\)=力\(F[N]\) × 回転半径\(r[m]\) × \(sin\theta\)×角度\([rad]\)
\(sin\theta\) が90°、
つまり、力\(F[N]\) の向きが 回転半径\(r[m]\) と直交していることを前提に出来る場合は
\(sin(90°)\) =1
となるため、上記式から \(sin\theta\) が消える。
たぶん、ここらへんの表現の豊富さにやられて皆さんググってこられているのでしょう。
全体の関係性は本記事下部の表を見ることでつかめると思う。
あとは、トルクと仕事の単位が似ているというのも混乱を誘っているかもしれない。
トルクの単位は\([N\cdot m]\)
仕事の単位は \([Nm]\)
共に力の単位\([N]\)と距離の単位\([m]\)を掛けたものに見える。
が、別物を思った方が良い。
トルクの単位の\([N\cdot m]\)は暗黙的に\(sin(\theta[rad])\) が隠れているのと、
距離の単位\([m]\) は移動距離ではなく、回転運動の半径を示しているため全く意味が異なる。
まぁその違いを示すために「\( \cdot \)」が入ってるのでしょうけど。
直交座標系と極座標系の接点
まず直交座標速度系の仕事\(W\)は以下になる。
仕事\(W[J]\)
質量\(m[g]\)
速度\(v[m/sec]\)
$$W=\frac{m}{\vec{v}^2}$$
そして極座標角速度系の仕事\(W\)は以下になる。
仕事\(W[J]\)
質量\(m[g]\)
角速度\(ω[rad/sec]\)
回転半径\(r[m]\)
$$W=\frac{m}{(\vec{r}\vec{ω})^2}$$
\(rω\)は円周速度なので、直交座標の速度と等価である。
よって、上記が同一と言える。
この仕事\(W\)を角速度で割ると角運動量\(L\)になる。
$$L=m\vec{r}^2ω$$
さらに、これを角度表現から円周表現に変える
回転距離\(l[m]\)
角度\(θ[rad]\)
$$L=m\vec{r}^2ω$$
\(ω\)は角速度なので、角度\(θ[rad]\)の微分である\(\displaystyle θ\frac{d}{dt}\)と表現できる。
$$L=m\vec{r}^2ω=m\vec{r}^2 θ\frac{d}{dt}$$
\(\vec{r}θ\)は回転距離なので、
$$L=m\vec{r}^2ω=m\vec{r}^2 θ\frac{d}{dt}=mrl\frac{d}{dt}$$
円周速度ベクトルと速度ベクトルの関係は以下になる。
円周速度=速度×\(sin(θ)\)
円周に接する場合は同一(1倍)となり、円周に対して直交すると(0倍)
よって、
$$L=m\vec{r}l sin(θ)\frac{d}{dt}$$
これは外積で表現できるので
$$L=m\vec{r}×l\frac{d}{dt}$$
$$=m\vec{v}×\vec{r}$$
これを時間で割るとトルク\(\vec{T}\)になる。
$$\vec{T}=m\vec{a}×\vec{r}$$
運動方程式\(\vec{F}=m\vec{a}\)より
$$\vec{T}=\vec{F}×\vec{r}$$
これで回転の運動方程式が導出される。
上記は忘れてもらって、以下の表を見れもらえれば良い。
直交座標系の関連表も一緒に見るとさらに理解が深まると思う。
まとめ
- 回転運動も直線運動に似た各種定義が存在
- トルク、角運動量、仕事、仕事率
- 直交座標と極座標は仕事と仕事率で接続されている
- 角度から円周に概念を移す際は直線運動の向きの概念が入る。
- \(sin(θ)\)の関係 → 外積
- 恐らくこれが混乱の元になっている。
大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理[力学・熱力学編]が面白いほどわかる本
大人のための高校物理復習帳 役立つ物理の公式28 (ブルーバックス)
はじめて学ぶ物理学—学問としての高校物理(上)
はじめて学ぶ物理学—学問としての高校物理(下)