行列の除算・・・の前に(結合法則はあれど、交換法則はない)
まず、行列は原則的には除算は存在しないが、
除算相当は存在する。
それが「逆行列を掛ける」というもの。
「除算」=「逆行列を掛ける」の話の前に、
「行列は積の結合法則はあれど、交換法則はない」
ということを認識しておく必要がある。
結合法則
\(
(AB)C=A(BC)
\)
交換法則(行列に於いて、こっちは成立しない)
\(
AB=BA
\)
左除算、右除算
交換法則が無いが故に、
左除算、右除算という概念が出てくる。
実際の演算は以下となる。
左除算
\(
A\backslash B=
A^{-1}B=
\begin{bmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{bmatrix}^{-1}
\begin{bmatrix}
5 & 6 \\
7 & 8
\end{bmatrix}=
\displaystyle
\frac{1}{1\times4-2\times3}
\begin{bmatrix}
4 & -2 \\
-3 & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
5 & 6 \\
7 & 8
\end{bmatrix}
\)
\(=
\begin{bmatrix}
-3 & -4 \\
4 & 5
\end{bmatrix}
\)
右除算
\(
A/B=
AB^{-1}=
\begin{bmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
5 & 6 \\
7 & 8
\end{bmatrix}^{-1}=
\begin{bmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{bmatrix}
\displaystyle
\frac{1}{5\times8-6\times7}
\begin{bmatrix}
8 & -6 \\
-7 & 5
\end{bmatrix}
\)
\(=
\begin{bmatrix}
3 & -2 \\
2 & -1
\end{bmatrix}
\)
要は
左に逆行列を置く想定だと左除算。
右に逆行列を置く想定だと右除算。
となる。
実際のところ、数式上は逆行列で書く方が多いため、
このような記載は少数派。
ただし、MATLAB等のツールで該当機能をサポートしていることが多いので、
このような演算表現が存在することだけでも覚えておいた方が良い。
行列の転置
やることは名前のままで、
「行列要素の配置を転ずる」
具体的な演算は以下となる。
\(
A^T=
\begin{bmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4
\end{bmatrix}^T=
\begin{bmatrix}
1 & 3 \\
2 & 4
\end{bmatrix}
\)
2×2行列だと性質が読み取れない可能性があるため、
3×3行列でもやってみると以下になる。
\(
\begin{bmatrix}
a & b & c \\
d & e & f \\
g & h & i
\end{bmatrix}^T=
\begin{bmatrix}
a & d & g \\
b & e & h \\
c & f & i
\end{bmatrix}
\)
転置の利用シーンはほぼ完全に計算都合。
行と列を入れ替えて、計算上の辻褄合わせで登場することがほとんど。
似たようなことを皆でやるため、明示的に「転置」という名前を付けたと思われる。
※ 直交行列の場合は、転置=逆行列なので少し意味合いが変わるが・・・。
まとめ
- 各種行列演算を説明。
- 本質的には線形代数学の基礎部分を把握しないと、なぜこんな計算になるかは見えない。
- 計算都合で生まれたものもある。
- 転置など。
MATLAB、Python、Scilab、Juia比較ページはこちら
社会のなかの数理 [新装版]──行列とベクトル入門──
なっとくする演習 行列・ベクトル なっとくする演習・行列 ベクトル (なっとくシリーズ)
ゼロからはじめるPID制御
基礎からわかる時系列分析―Rで実践するカルマンフィルタ・MCMC・粒子フィルタ― Data Science Library
観測と最小二乗法―測量・G空間データの解析
ディジタル画像処理[改訂第二版]
高校数学でわかるフーリエ変換―フーリエ級数からラプラス変換まで (ブルーバックス)
マンガでわかるフーリエ解析
入門信号処理のための数学―離散フーリエ変換・離散コサイン変換
はじめて学ぶディジタル・フィルタと高速フ-リエ変換: 基礎・原理からよく理解するための (ディジタル信号処理シリーズ)
コメント