JDLA G検定 2021年版、2024年版シラバスを比較してみた

JDLA G検定 2021年版、2024年版シラバスを比較してみた G検定
JDLA G検定 2021年版、2024年版シラバスを比較してみた

AI の社会実装に向けて

AIプロジェクトの進め方

CRISP-ML

CRISP-ML(Cross-Industry Standard Process for Machine Learning)は、
AIプロジェクトを体系的に進めるためのフレームワーク。
これは、データマイニングの標準プロセスであるCRISP-DMを基にしており、
機械学習プロジェクトに特化したもの。

CRISP-MLのフェーズ

  • ビジネス理解:
    • プロジェクトのビジネス目標を明確にし、成功基準を設定する。
  • データ理解:
    • データの収集と初期分析を行い、データの品質や特性を理解する。
  • データ準備:
    • データのクリーニング、変換、特徴量エンジニアリングを行い、モデル構築に適したデータセットを作成する。
  • モデリング:
    • 適切な機械学習アルゴリズムを選択し、モデルを構築する。
  • 評価:
    • モデルの性能を評価し、ビジネス目標に対する適合性を確認する。
  • 展開:
    • モデルを実運用環境に展開し、継続的なモニタリングとメンテナンスを行う。

アジャイル

アジャイル開発は、プロジェクトを柔軟かつ迅速に進めるための手法。
特に変化の激しいAIプロジェクトにおいて、その柔軟性と迅速な対応力が大きな強みとなっている。

アジャイル開発の進め方

  • イテレーション(反復):
    • プロジェクトを短いサイクル(通常は1~4週間)に分割し、それぞれのサイクルで計画、開発、テスト、レビューを行う。
    • このサイクルを「スプリント」と呼ぶ。
  • スプリントプランニング:
    • 各スプリントの開始前に、チームは「スプリントプランニング」を行い、次のスプリントで取り組むタスクを決定する。
    • これにより、短期間で具体的な目標を設定し、進捗を管理する。
  • デイリースクラム:
    • 毎日短時間のミーティング(デイリースクラム)を行い、各メンバーの進捗状況や問題点を共有する。
    • これにより、チーム全体のコミュニケーションを強化し、迅速な問題解決を図る。
  • スプリントレビューとレトロスペクティブ:
    • スプリントの終了時に、成果物をレビューし、次のスプリントに向けた改善点を話し合う。
    • これにより、継続的な改善が可能となる。

アジャイル開発のメリット

  • 柔軟性: 要件の変更に迅速に対応できるため、プロジェクトの方向性を柔軟に調整できる。
  • 早期フィードバック: 短いサイクルで成果物をリリースするため、早期にフィードバックを得て改善を行える。
  • チームの協力: 頻繁なコミュニケーションと協力により、チーム全体の生産性と士気が向上する。

ウォーターフォール

ウォーターフォール開発は、プロジェクトを進めるための伝統的な手法の一つ。
この手法は、各工程を順番に進めるシーケンシャルモデルで、
次の工程に進む前に前の工程を完全に完了することが求められる。

ウォーターフォール開発は、要件が明確で変更が少ないプロジェクトに適しているが、
AIプロジェクトのように要件が変わりやすい場合には、アジャイル開発の方が適していることが多い。

ウォーターフォール開発の主な工程

  • 要件定義:
    • プロジェクトの目標や要件を明確にし、文書化する。
  • 設計:
    • システム全体の設計を行い、詳細な仕様を決定する。
  • 開発:
    • 実際のコーディングを行い、システムを構築する。
  • テスト:
    • 開発したシステムが要件を満たしているかを確認するためのテストを行う。
  • 運用・保守:
    • システムを実際に運用し、必要に応じて保守や改善を行う。

ウォーターフォール開発のメリットとデメリット

  • メリット:
    • 明確な構造: 各工程が明確に定義されているため、進捗管理がしやすい。
    • 早期の計画: 初期段階で全ての要件を定義するため、プロジェクトの全体像が把握しやすい。
  • デメリット:
    • 柔軟性の欠如: 一度決定した要件や設計を後から変更するのが難しい。
    • 後半の問題発見: テストが後半に行われるため、問題が発見されるのが遅れる可能性がある。

「アジャイル vs ウォーターフォール」という図式で語られることは多いが、
実際には、状況に応じたハイブリッドな手法を柔軟に取捨選択をするため、
「アジャイル vs ウォーターフォール」は見た目上わかりやすいキャッチーな表現程度の話となる。

以下はよくある構成例。

  • フェーズごとのハイブリッド
    • 前半アジャイル、後半ウォーターフォール。またはその逆。
  • アジャイルの中にウォーターフォール
    • スプリント内で、ウォーターフォールのような計画性を持たせる
  • ウォーターフォールの中にアジャイル
    • ウォーターフォールの各フェーズ内で短いイテレーションを設け、定期的にレビューとフィードバックを行う。
  • リスク駆動型ハイブリッド
    • リスクの高い部分はアジャイルで柔軟に対応し、リスクの低い部分はウォーターフォールで生産性引き上げ。
  • コンポーネントベースのハイブリッド
    • プロジェクトをコンポーネントごとに分け、各コンポーネントに最適な手法を適用する方法。
    • 例えば、ユーザーインターフェース部分はアジャイルで開発し、バックエンドシステムはウォーターフォールで進めるなど。

※ 基本的にはどれもリスク駆動型ハイブリッドですべて語ることはできる。

AI に必要な数理・統計知識

2021年版シラバスでは、「統計検定3級程度の基礎的な知識」としか記載がなかったが、
2024年版では、重要な用語が明記されるようになった。
これにより、対策しやすくなったと思われる。

  • 移動平均
  • 確率分布
  • 確率変数
  • 確率密度
  • 疑似相関
  • 期待値
  • 帰無仮説
  • 共分散
  • コサイン類似度
  • 最小二乗法
  • 最頻値
  • 最尤法
  • 条件付き確率
  • 正規分布
  • 相関係数
  • 相互情報量
  • 対立仮説
  • 中央値
  • 度数分布
  • 二項分布
  • 外れ値
  • 標準偏差
  • 平均
  • 分散
  • 偏相関係数
  • ベルヌーイ分布
  • ポアソン分布
  • マハラノビス距離
  • ユークリッド距離

AIに関する法律と契約

個人情報保護法

2021年シラバスでは「個人情報保護法」としか記載がなかったが、
2024年版シラバスでは具体的な用語が記載されるようになった。

仮名加工情報

仮名加工情報とは、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないように加工された個人情報のこと。
例えば、名前を仮名に置き換えたり、特定の識別情報を削除したりすることで得られる。

  • 目的:
    • 個人情報を適切に保護しつつ、データの利活用を促進するために導入された。
    • これにより、企業はデータを分析や研究に利用しやすくなる。
  • 特徴:
    • 仮名加工情報は、元の個人情報を持つ事業者が他の情報と照合しない限り、特定の個人を識別できない。
    • また、匿名加工情報とは異なり、仮名加工情報は元の個人情報と関連付けることが可能。
  • 利用制限:
    • 仮名加工情報は、第三者への提供が原則として禁止されている。
    • ただし、内部での利用や分析には使用できる。
個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)) |個人情報保護委員会
個人情報保護委員会のホームページです。令和5年4月施行の個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)を掲載しています。

個人識別符号

個人識別符号とは、特定の個人を識別することができる符号(文字、番号、記号など)で、政令で定められたものを指す。

  • 具体例:
    • 指紋や静脈などの身体的特徴を変換した符号。
    • 運転免許証やパスポートの番号、マイナンバーなど、個人に割り当てられた符号。
  • 利用目的:
    • 個人識別符号は、個人情報の保護と管理を強化するために使用される。
    • これにより、個人情報の適切な取り扱いが求められる。
  • 法的背景:
    • 2015年の個人情報保護法改正により、新たに制定された。
    • これにより、個人情報の定義が明確化され、事業者が適切に対応できるようになった。
「個人識別符号」とはどのようなものを指しますか。 |個人情報保護委員会
「個人識別符号」とはどのようなものを指しますか。

個人データ

個人データとは、個人情報データベース等を構成する個人情報のこと。
具体的には、特定の個人情報を容易に検索できるように体系的にまとめられた情報の集合体を指す。

  • 個人情報データベース等:
    • これは、コンピュータを用いて検索可能な個人情報の集合体や、紙面で整理された個人情報を含む。
      例えば、顧客管理システムや社員名簿などが該当。
  • 保有個人データ:
    • 個人データのうち、個人情報取扱事業者が開示、訂正、利用停止などの権限を有するものを指す。
    • これには、特定の条件を満たすデータが含まれる。
  • 利用目的:
    • 個人データは、個人情報の適切な管理と利用を促進するために使用される。
    • これにより、データの安全性とプライバシーが保護される。

第三者提供

個人情報の第三者提供とは、個人情報取扱事業者が保有する個人情報を、
本人以外の第三者に提供することを指す。

  • 原則:
    • 原則として、個人情報を第三者に提供するには、あらかじめ本人の同意を得る必要がある。
  • 例外:
    • 本人の同意がなくても提供できる場合がある。
    • 例えば、法令に基づく場合や、人の生命、身体、または財産の保護のために必要な場合など。
  • オプトアウト:
    • オプトアウトとは、本人の求めがあった場合に提供を停止することを条件として、あらかじめ本人の同意を得ることなく第三者提供を行う制度。
  • 確認・記録義務:
    • 第三者提供を行う際には、提供者と受領者の氏名や提供年月日などを記録し、一定期間保存する義務がある。

保有個人データ

保有個人データとは、個人データのうち、個人情報取扱事業者が開示、内容の訂正、追加、削除、利用の停止、消去、および第三者への提供の停止を行うことができる権限を有するものを指す。

  • 特徴:
    • これには、個人情報取扱事業者が管理するデータで、本人からの請求に応じて対応できるものが含まれる。
    • 委託を受けて取り扱っている個人データや、体系的に整理されていない個人情報は含まれない。
  • 利用目的:
    • 保有個人データは、個人情報の適切な管理と利用を促進するために使用される。
    • これにより、データの安全性とプライバシーが保護される。

要配慮個人情報

要配慮個人情報とは、本人に対する不当な差別、偏見、その他の不利益が生じないように、
特に配慮が必要な個人情報を指す。

  • 具体例:
    • 人種、信条、社会的身分
    • 病歴、健康診断の結果
    • 犯罪の経歴、犯罪の被害にあった事実
    • 身体障害、知的障害、精神障害に関する情報
  • 取得と利用:
    • 要配慮個人情報を取得する際には、原則として本人の同意が必要。
    • オプトアウト方式による第三者提供は認められていない。
  • 保護措置:
    • 要配慮個人情報を取り扱う際には、特に厳格な管理と保護措置が求められる。
個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン (行政機関等編) |個人情報保護委員会
個人情報委員会(PPC)のホームページです。個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン の(行政機関等編)を掲載しています。

利用目的

個人情報の利用目的とは、個人情報をどのような目的で利用するかを明確にすること。
これにより、個人情報の適正な取り扱いが確保される。

  • 特定の必要性:
    • 個人情報取扱事業者は、利用目的を「できる限り特定」しなければならない。
    • これは、個人情報がどのような事業の用に供され、どのような目的で利用されるのかを、本人が一般的かつ合理的に予測・想定できる程度に特定することを意味する。
  • 通知・公表:
    • 利用目的は、本人に通知するか、または公表する必要がある。
    • これにより、本人が自分の個人情報がどのように利用されるかを理解できるようになる。
  • 変更時の対応:
    • 利用目的を変更する場合は、原則として本人の同意を得るか、変更後の利用目的を通知または公表する必要がある。

委託

個人情報保護法における委託とは、個人情報取扱事業者が他の者に個人データの取扱いを行わせることを指す。
これには、データの入力、編集、分析、出力などの処理が含まれる。

  • 監督義務:
    • 委託元(委託者)は、委託先(受託者)に対して適切な監督を行う義務がある。
    • 具体的には、適切な委託先の選定、委託契約の締結、委託先の取扱状況の把握が求められる。
  • 安全管理措置:
    • 委託先も個人情報取扱事業者として、安全管理措置を講じる義務がある。
    • これには、個人データの漏洩防止や適切な保管・管理が含まれる。
  • 第三者提供との違い:
    • 委託は第三者提供とは異なり、委託元が委託先に対して個人データの取扱いを行わせるものであり、第三者提供のように本人の同意を得る必要はない。

著作権法

創作性

創作性とは、著作物が他の作品と区別されるために必要な要素であり、
著作者の個性が表現されていることを指す。

  • 要件:
    • 創作性が認められるためには、作品に最低限の独自性や個性が必要。
    • ただし、高度な独創性や新規性は必ずしも必要ではない。
  • 判断基準:
    • 創作性の判断は、作品がどれだけ著作者の個性を反映しているかに基づく。
    • 例えば、単なる事実やデータの羅列は創作性が認められないが、独自の表現や構成がある場合は創作性が認められる。
  • 具体例:
    • 幼児の絵や日常的な文章でも、著作者の個性が表現されていれば創作性が認められる。

AI生成物

著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義している。
このため、AIが自動で生成した作品には、著作権が発生しない。
AIは「機械」であり、創作に「思想や感情」を込めることができないため。

  • 人間の関与:
    • ただし、人がAIを「道具」として使用し、思想や感情を創作的に表現する場合、その生成物は著作物に該当する可能性がある。 – この場合、著作権はその人間に帰属する。
  • 著作権侵害のリスク:
    • AIが生成したコンテンツが既存の著作物に類似している場合、著作権侵害が認められることがある。
    • 特に、AIの学習データに他者の著作物が含まれている場合は注意が必要。
  • 法的対応:
    • 日本の著作権法では、AIと著作権の関係についてのガイドラインが整備されており、AI生成物の利用に関する柔軟な権利制限規定が設けられている。
AIと著作権について | 文化庁
政策について

利用規約

利用規約は、サービス提供者と利用者の間で取り決められるルールや条件を明示する文書。
著作権に関する利用規約は、著作物の利用方法や権利の帰属について明確にするために重要。

  • 著作権の譲渡とライセンス:
    • 利用規約には、著作物の著作権を譲渡するのか、ライセンスを許諾するのかを明記する必要がある。
    • 譲渡の場合、著作権は完全に移転するが、ライセンスの場合は利用条件を設定して許諾する。
  • 無償か有償か:
    • 著作権の譲渡やライセンスが無償か有償かも明確にする必要がある。
    • 無償の場合でも、利用者の反発を避けるために、利用規約でその理由を説明することが望ましい。
  • 著作権の範囲:
    • 利用規約には、譲渡またはライセンスする著作権の範囲を具体的に記載する。
    • これにより、どの権利が含まれるのかが明確になる。
  • 著作者人格権:
    • 著作者人格権は、著作物の内容やタイトルを変更しない権利など、著作者の人格的利益を保護する権利。
    • 利用規約でこれらの権利についても触れることが重要。

著作権侵害

著作権侵害とは、著作権者の許可なく著作物を複製、翻訳、配布、展示、または公衆送信する行為を指す。

  • 具体例:
    • 他人の著作物を無断でコピーして配布する
    • インターネット上に著作物を無断でアップロードする
    • 著作物を改変して公開する
  • 罰則:
    • 著作権侵害が認められた場合、民事上の損害賠償請求や差止請求が行われるほか、刑事罰として10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科されることがある。
  • 親告罪:
    • 著作権侵害は親告罪であり、被害者である著作権者が告訴しない限り、刑事罰が科されることはない。

特許法

2021年版シラバスでは「特許法」とだけ記載されていたが、
2024年版シラバスでは詳細の用語が記載されるようになった。

発明

特許法では、「発明」を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義している。
これは、自然界の法則を利用して技術的なアイデアを創作することを意味する。

  • 要件:発明が特許として認められるためには、以下の要件を満たす必要がある
    • 自然法則の利用: 発明は自然法則を利用している必要がある。例えば、エネルギー保存の法則や万有引力の法則など。
    • 技術的思想: 発明は技術的なアイデアであり、具体的な手段を提供するものでなければならない。
    • 創作: 発明は人為的に作り出されたものであり、単なる発見や自然現象ではない。
    • 高度のもの: 発明は高度な技術的なものとされ、実用新案法の「考案」と区別される。
  • 発明の種類:発明は大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類される:
    • 物の発明: 機械、器具、装置、医薬品などの具体的な物体。
    • 方法の発明: 物を生産する方法や操作方法、分析方法など。
    • 物を生産する方法の発明: 医薬品の製造方法や植物の作出方法など。

新規性

新規性とは、発明が特許出願前に公然と知られていないことを指す。
特許法第29条第1項に基づき、発明が新しいものであることが求められる。

  • 新規性がないとされる場合:
    • 公然知られた発明: 出願前に日本国内または外国で公然と知られている発明。
    • 公然実施された発明: 出願前に日本国内または外国で公然と実施された発明。
    • 頒布された刊行物に記載された発明: 出願前に刊行物に記載され、またはインターネット上で公衆に利用可能となった発明23
  • 新規性喪失の例外:
    • 特許法第30条には、新規性喪失の例外規定が設けられている。
    • これは、発明者が特許出願前に発明を公開してしまった場合でも、一定の条件を満たせば新規性が失われなかったものとみなされる制度。

進歩性

特許法における「進歩性」とは、発明が既存の技術に基づいて、
その技術分野の専門家が容易に思いつかないものであることを指す。

  • 判断基準:
    • 特許庁の審査官が、当業者の視点から発明の進歩性を判断する。
    • 具体的には、先行技術と比較して、発明がどれだけ新規であるか、そしてその新規性が当業者にとって容易に思いつかないものであるかを評価する。
  • 具体例:
    • 例えば、スマートフォンの画面にほこりがつきにくくするために帯電防止剤を使用する発明があるとする。
    • この場合、既存の技術文献に帯電防止剤の使用が記載されている場合、その技術をスマートフォンに応用することが容易であると判断されると、進歩性が認められない可能性がある。

知的財産権

特許法における知的財産権は、発明を保護するための権利。
知的財産権には以下のような種類がある。

  • 特許権:
    • 新規で高度な技術的アイデアを保護する。
    • 特許権は出願から20年間有効で、その間、発明者はその技術を独占的に使用できる。
  • 実用新案権:
    • 物品の形状や構造に関する考案を保護する。
    • 特許権に比べて審査が簡易で、保護期間は10年。
  • 意匠権:
    • 物品のデザイン(形状、模様、色彩など)を保護する。
    • 保護期間は25年。
  • 商標権:
    • 商品やサービスを他と区別するためのマーク(ロゴ、名前など)を保護する。
    • 商標権は更新可能で、理論上は無期限に保護される。

これらの権利は、発明者や企業が技術やデザインを独占的に使用し、模倣を防ぐために重要。
また、知的財産権を取得することで、ライセンス契約を通じて他者に使用を許諾し、収益を得ることも可能。

発明者

特許法における発明者は、発明の技術的思想の創作行為に現実に関与した人。
単なる補助者や資金提供者は発明者とは認められない。

  • 発明者の権利:
    • 発明者には、特許を受ける権利がある。
    • この権利は譲渡や相続が可能で、特許権として登録されるまで存続する。
  • 職務発明:
    • 企業や大学などで従業員が行った発明は「職務発明」と呼ばれる。
    • 職務発明の場合、発明者には相当の対価が支払われる権利がある。
  • 発明者の認定:
    • 発明者として認定されるためには、発明の創作行為に具体的に関与したことを証明する必要がある。
    • 研究ノートや実験データの記録が重要。

職務発明

特許法における職務発明は、従業者がその業務範囲内で行った発明であり、
その発明が使用者(企業や組織)の業務に関連するもの。

  • 権利の帰属:
    • 職務発明に関する特許を受ける権利は、原則として発明者である従業者に帰属するが、契約や勤務規則であらかじめ使用者に帰属させることができる。
  • 相当の対価:
    • 従業者が職務発明を行い、その権利を使用者に譲渡した場合、従業者は相当の対価(報酬)を受ける権利がある。
  • 法改正:
    • 2015年の特許法改正により、職務発明の権利帰属に関する規定が見直され、使用者に権利を帰属させることが容易になった。

特許権

特許法における「特許権」とは、特許を受けた発明を一定期間独占的に実施できる権利のこと。

  • 特許権の内容:
    • 特許権は、特許を受けた発明を生産、使用、販売、輸出、輸入する権利を独占的に持つことができる。
  • 特許権の期間:
    • 特許権の存続期間は、特許出願日から20年間。
    • この期間が過ぎると、発明は公知のものとなり、誰でも自由に使用できるようになる。
  • 特許権の取得:
    • 特許権を取得するためには、特許庁に特許出願を行い、審査を経て特許として認められる必要がある。
  • 特許権の効力:
    • 特許権者は、他人が無断で特許発明を実施した場合、差止めや損害賠償を請求することができる。

独占禁止法

2021年版シラバスでは、独占禁止法については触れらていなかった。

最近になってAI関連で独占禁止法を意識する必要が高まってきている。
これは、AI技術の進展とその利用が広がる中で、競争制限行為が新たな形で現れる可能性があるため。

例えば、AIを用いた価格調整や市場支配の手法が問題視されている。
具体的には、AIが自動的に価格を設定し、競争を制限する「デジタルカルテル」などの新しい競争制限行為が懸念されている。
これにより、公正取引委員会などの規制当局がAIと独占禁止法の関係についての検討を進めている。

また、AIが大量のデータを処理し、特定の企業が市場で優位に立つことができるようになると、
競争が不公平になる可能性がある。
このため、AIを利用する企業は独占禁止法に違反しないように注意する必要がある。

競争制限

独占禁止法における「競争制限」とは、事業者間の公正かつ自由な競争を阻害する行為や状態を指す。

  • 私的独占:
    • 他の事業者を市場から排除したり、支配したりすることで競争を実質的に制限する行為。
    • 例えば、不当な低価格販売や排他的取引などが該当する。
  • 不当な取引制限:
    • 複数の事業者が協力して価格や供給量を決定する行為。
    • カルテルや入札談合が典型的な例。
  • 不公正な取引方法:
    • 競争を不当に制限する取引方法。
    • 例えば、差別的な取引条件や不当廉売などが含まれる。
  • 企業結合:
    • 企業の合併や株式取得などにより、競争が実質的に制限される場合がある。
    • これも独占禁止法で規制されている。

公正競争阻害性

独占禁止法における「公正競争阻害性」とは、事業者間の公正かつ自由な競争を妨げる行為や状態を指す。

  • 自由競争の減殺:
    • 競争を減少させる行為。
    • 例えば、複数の事業者が価格を協定するカルテルなどが該当する。
  • 競争手段の不公正:
    • 競争手段が不公正である場合。
    • 例えば、差別的な取引条件や不当な低価格販売などが含まれる。
  • 自由競争基盤の侵害:
    • 競争の基盤を侵害する行為。
    • 例えば、特定の事業者を市場から排除する行為や、排他的な取引条件を課すことが該当する。

AI開発委託契約

2021年版シラバスでは、

  • AI・データの利用に関する契約ガイドライン
  • PoC
    程度の記載だったが、2024年版シラバスで契約のバリエーションについて明確に記載されている。

NDA

NDA(秘密保持契約)は、開発プロジェクトにおいて重要な情報を保護するための契約。

  • NDAの目的:
    • NDAは、開発プロジェクトに関わる機密情報が第三者に漏洩するのを防ぐために締結される。
    • これには、技術情報、ビジネス戦略、顧客情報などが含まれる。
  • 秘密情報の定義:
    • NDAでは、どの情報が秘密情報に該当するかを明確に定義する。
    • 一般的には、書面や口頭で開示された情報が含まれるが、具体的な範囲は契約書に記載される。
  • 秘密保持義務:
    • 契約当事者は、秘密情報を第三者に開示せず、契約の目的以外に使用しない義務を負う。
    • この義務は、契約期間中および契約終了後も継続する。
  • 違反時の対応:
    • NDAに違反した場合、損害賠償や契約解除などの措置が取られることがある。
    • 具体的な対応は契約書に記載される。

請負契約

AI開発委託契約における「請負契約」は、開発者が特定の成果物を完成させることを約束し、
その完成に対して報酬を受け取る契約形態。

  • 請負契約の特徴:
    • 成果物の完成: 請負契約では、開発者(請負人)が注文者に対して特定の成果物を完成させる義務がある。完成しなければ報酬を受け取ることができない。
    • 責任の重さ: 請負人は、成果物に瑕疵(欠陥)があった場合、その修補や損害賠償の責任を負う。
  • AI開発における課題:
    • 不確実性: AI開発は、学習データの質や量に依存するため、成果物の性能を事前に保証することが難しい。このため、請負契約ではなく、準委任契約が選ばれることも多い。
  • 契約の選択:
    • 請負契約の適用: 明確な成果物が定義できる場合や、完成が保証できる場合に適している。
    • 準委任契約との比較: 準委任契約では、特定の成果物の完成を約束せず、一定の業務を遂行することに対して報酬が支払われる。AI開発では、こちらの契約形態が適している場合もある。

準委任契約

「準委任契約」は、特定の成果物の完成を約束せず、合理的な努力をもって業務を遂行することを目的とする契約形態。

  • 準委任契約の特徴:
    • 業務遂行の義務: 準委任契約では、受任者(開発者)は特定の成果物の完成を約束せず、合理的な努力をもって業務を遂行する義務がある。
    • 責任の範囲: 成果物の完成が保証されないため、請負契約に比べて受任者の責任が軽減される。
  • AI開発における適用:
    • 不確実性の対応: AI開発は、学習データの質や量に依存するため、成果物の性能を事前に保証することが難しい。このため、準委任契約が適している場合が多い。
    • 柔軟な対応: 開発プロセス中に発生する不確実な要素や変更に柔軟に対応できるため、AI開発においては準委任契約が選ばれることが多い。
  • 契約の内容:
    • 業務範囲の明確化: 準委任契約では、具体的な業務内容や範囲を明確に定めることが重要。これにより、双方の期待値を一致させることができる。
    • 報酬の支払い: 業務の遂行に対して報酬が支払われるが、成果物の完成に対する報酬ではないため、業務の進捗に応じて段階的に支払われることが一般的。

精度保証

「精度保証」は、AIシステムやモデルが期待される性能を達成することを保証する契約条項。

  • 精度保証の難しさ:
    • AIの性能は、学習データの質や量、アルゴリズムの選択、ハードウェアの性能など多くの要因に依存する。
    • そのため、事前に特定の精度を保証することが難しい場合がある。
  • 契約内容の工夫:
    • 精度保証を行う場合、具体的な評価基準やテストデータセットを明確に定めることが重要。
    • これにより、双方の期待値を一致させることができる。
    • また、段階的な開発プロセスを取り入れ、各段階での性能評価を行うことで、最終的な精度保証を行う方法もある。
  • 柔軟な対応:
    • AI開発は不確実性が高いため、契約には柔軟性を持たせることが重要。
    • 例えば、一定の条件下での性能保証や、追加の学習や調整を行うオプションを設けることが考えられる。
  • リスク分担:
    • 精度保証に関するリスクをどのように分担するかも重要なポイント。
    • 例えば、性能が期待に達しなかった場合の対応策や、損害賠償の範囲を明確にすることが必要。

保守契約

「保守契約」は、開発されたAIシステムやモデルの運用後のサポートやメンテナンスを行うための契約。

  • 保守契約の目的:
    • AIシステムの安定運用を確保し、問題が発生した際に迅速に対応するためのもの。
    • これには、バグ修正、性能改善、アップデートなどが含まれる。
  • 契約内容:
    • 保守契約では、具体的な保守内容、対応時間、対応方法、報酬などを明確に定める。
    • 例えば、24時間対応のサポートや、定期的なシステムチェックなどが含まれる。
  • 責任範囲:
    • 保守契約には、どの範囲までが保守対象となるかを明確にすることが重要。
    • これにより、トラブル発生時の対応がスムーズになる。
  • 更新と改善:
    • AI技術は急速に進化するため、保守契約にはシステムの更新や改善も含まれることがある。
    • これにより、最新の技術を取り入れたシステム運用が可能となる。

AIサービス提供契約

2021年版シラバスでは、AIサービス提供契約に関する用語は皆無であったが、
2024年場シラバスでは具体的な提供契約の用語が追加されている。

2024年版シラバスにAIサービス提供契約の用語が追加された理由は、
AI技術の普及と実用化、法的・倫理的課題の増加、実務的スキルの強化、市場のニーズへの対応など。
これにより、AIプロジェクトの成功に必要な契約や法的知識が重視されるようになった。

SaaS

「SaaS」(Software as a Service)は、AI技術などを基盤としたソフトウェアをインターネットを通じて提供するサービスモデル

  • 特徴:
    • クラウドベース: ソフトウェアはクラウド上でホストされ、インターネット経由でアクセス可能。これにより、初期導入コストが低く、柔軟にスケールできる。
    • 自動更新: ベンダー側でセキュリティ対策やアップデートが行われるため、常に最新の機能を利用できる。
  • メリット:
    • コスト削減: 自社でAIシステムを構築する必要がなく、低コストで高品質なツールを利用できる。
    • 柔軟性: 必要な機能を必要な時に利用でき、業務の効率化や自動化が可能。
  • デメリット:
    • ランニングコスト: サブスクリプション方式のため、契約期間中は毎月の費用が発生する。
    • データ移行の手間: サービス間の連携がない場合、データ移行が不便になることがある。

データ利用権

AIサービス提供契約における「データ利用権」は、契約当事者がどのようにデータを使用できるかを定める重要な条項。

  • データの定義:
    • 契約で使用されるデータの種類や範囲を明確に定義する。
    • これには、提供データ、生成データ、派生データなどが含まれる。
  • 利用権限の範囲:
    • データをどのように利用できるか、例えば分析、加工、第三者への提供などの範囲を定める。
    • 利用目的や条件も明確にする。
  • データの所有権と利用権:
    • データの所有権が誰にあるか、利用権がどのように分配されるかを明確にする。
    • これにより、データの不正利用や紛争を防ぐ。
  • セキュリティとプライバシー:
    • データのセキュリティ対策やプライバシー保護に関する条項を含めることが重要。
    • これにより、データの漏洩や不正アクセスを防ぐ。

利用規約

「利用規約」は、サービスの利用に関する条件やルールを定めた文書。

  • 利用範囲の定義:
    • サービスの利用目的や範囲を明確にする。
    • 例えば、商業利用や個人利用の制限、特定の機能の使用条件などが含まれる。
  • ユーザーの義務:
    • ユーザーが遵守すべきルールや禁止事項を定める。
    • これには、不正アクセスの禁止やデータの不正利用の防止などが含まれる。
  • データの取り扱い:
    • サービス利用中に生成されるデータの所有権や利用権について規定する。
    • データの保存期間や第三者への提供条件も含まれる。
  • 責任の限定:
    • サービス提供者の責任範囲を明確にし、トラブル発生時の対応方法を定める。
    • これにより、予期せぬ損害や紛争を防ぐことができる。
  • 契約の終了:
    • 利用規約の違反時や契約終了時の対応について規定する。
    • データの削除やアカウントの停止などが含まれる。

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