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はじめに
前回は「MDF仕様単体以外の有用性」としてASAM ODSとの連携の話をした。
ASAM OSDはテスト自動化にあたり、表現の曖昧性に課題とした仕様で、ざっくり言うと「テスト管理のパラメータの標準化」。
ASAM OSDの中のMEASURMENTS領域とDIMENSION&UNIT領域がMDFと関係する。
しかし、MDFとODSでは育ってきた文化の違いから完全な互換性を持っているわけでは無い。
そこらへんの裏話をしていく。
登場人物
博識フクロウのフクさん
イラストACにて公開の「kino_k」さんのイラストを使用しています。
https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=iKciwKA9&area=1
エンジニア歴8年の太郎くん
イラストACにて公開の「しのみ」さんのイラストを使用しています。
https://www.ac-illust.com/main/profile.php?id=uCKphAW2&area=1
ASAM OSDが育ってきた文化
前回の話だと
「MDFとODS自体は全く異なる文化で育ってきた仕様」
だから簡単には連携できなそうな話が出てきてたけど、ここらへんの話をよろしくー。
まず「ASAM OSDが育ってきた文化」について話してみよう。
前回も言ったようにASAM OSDは「テスト自動化にあたり、表現の曖昧性に課題とした仕様」。
このテストは車両のNVH評価を対象としたものだ。
NVH?
Noise、Vibration、Harshnessの頭文字だね。
Noise=騒音
Vibration=振動
Harshness=ハーシュネス(荒れた状態の路面や継ぎ目を乗り越えた際の振動や衝撃音)
いわゆる静粛性評価ってやつかな?
そうだね。
静粛性評価は全体が組みあがった際に初めて評価できるんで、
単体レベルの評価ではほぼ評価できないんだよね。
まぁエンジンの騒音とかは単体である程度見ているとは思うけど。
でも騒音、振動を計測するだろうから、MDFとか使いそうだけど?
それが、あんまりMDFは使ってはいないようだね。
使用する計測器自体は騒音、振動に特化したもので、
それらのベンダーはMDFをあまり使ってなかった。
生データは取れるので、それらをデータベースで管理して必要な時に取り出してフーリエ変換等の演算をして解析する。
って流れだと思う。
ベンダーも設備系になって、MDFの存在は知ってはいるだろうが、それを積極的に利用するところではないのだろう。
確かに騒音、振動の計測器は特殊な印象あるねー。
ASAM MDFが育ってきた文化
次にASAM MDFが育ってきた文化。
これはECUの検証がメインのところだね。
ECUの計測&キャリブレーションの領域だ。
こっちの方がまだ馴染みが深いかな。
この領域は昔からMDFを使ってきたベンダーがほとんどだ。
Vector社、ETAS社が代表的。
つまるところ、仕様が育ってきた文化というかベンダー依存?
端的に言うとそういうことになるね。
なんか標準仕様と言う割にはあまり足並みがそろってない印象が強いな。
まぁ最初から標準仕様を狙っていたというより、
部分最適の結果としての標準仕様だからね。
主要ベンダーが
「我々が使ってるんで、みんなもこっちに合わせて使ってね」
と言ってる程度だ。
ASAM仕様が緩い標準化と言われる所以だな。
ASAM仕様の認識のギャップ
「緩い標準化」かー。
日本人的には違和感ありまくりだなー。
そうだろうね。
日本人がイメージする標準化って
ISOとかJISとかの規格のイメージが強くて
「絶対に順守!」
なんだけど、
ASAMに代表される欧州の標準化は
「これに合わせると比較的楽に統合できるから可能なら合わせてね」
って感じなんで、このギャップを認識できていないと、
「ASAM仕様に準拠すべき!」
みたいない良く分からない標準化推進がなされることになる。
「ASAM仕様に準拠すべき!」
は別に問題無いような気がするけど?
明確に目的があって準拠する分には良いのだけど、
無条件に準拠すべきだと、あまり効果はないというか、効果が認識できないんじゃないかなー。
各ベンダーもASAM仕様に合わせてはいるものの他の計測器で取ったデータを問題無く扱えるを保証してるわけじゃないもんね。
日本人の感覚だと保証されてるものを思っちゃうから後で揉めやすいかな。
それは確かにヤバそうだ!
「おおよその作りは問題無いから、システム同士を統合する際にチョイ修正でできるよ。」
くらいの認識が妥当だろう。
まとめ
まとめだよ。
- ASAM OSDが育ってきた文化について説明。
- 車両のNVH(Noise、Vibration、Harshness)評価を想定したもの。
- ベンダー的にはあまりMDFは使用しない。
- ASAM MDFが育ってきた文化について説明。
- ベンダーが積極的にMDF利用。
- 標準化の認識が日本人的には強烈なギャップあり。
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